四逆散とはいったいなに?

2018.03.18

i21

四逆散(シギャクサン)は、わかりやすく言うと、精神的なストレスや、ストレスから来る腹痛、胃炎、胃痛などのお薬です。

本来は生薬の粉末を混合した「散剤」ですが、成分を抽出して飲みやすくしたエキス剤としても売られています。

以下、四逆散について詳しくみてみましょう。

四逆散の歴史とは?

四逆散は『傷寒論』という漢方の古典に記載されているお薬です。

もともとは手足の冷えに効くとされたものです。

手足(四肢)の冷え(逆冷)に効く散剤なので「四逆散」というわけです。

もっとも、現在は「体力が中くらい以上で、胸脇苦満がある人の腹痛、胃炎、胃痛」や神経症状に処方されます。

「胸脇苦満」は胸腹部の重苦しさ、詰まった感じです。

四逆散の成分とは?

四逆散は、柴胡(サイコ)、枳実(キジツ)、芍薬(シャクヤク)、甘草(カンゾウ)という4種類の生薬成分からなります。

柴胡

柴胡はミシマサイコ(Bupleurum stenophyllum)の根です。

ミシマサイコはセリ科ミシマサイコ属の多年草で、日本では静岡県の三島付近産のものが有名だったのでこの和名がありますが、現在は国内では九州産が主です。

中国産や韓国産もあります。

根はサポニンを多く含み、抗炎症作用、解熱作用、鎮痛作用などがあります。

柴胡は四逆散の他にも多数の漢方薬に含まれており、「柴胡剤」と総称されます。

例えば、大柴胡湯(ダイサイコトウ)、小柴胡湯(ショウサイコトウ)などが有名です。

枳実

枳実はダイダイやナツミカンの幼果(まだ小さい未熟果)をそのまま乾燥させたものです。

枳実よりも育った未熟果を乾燥させたものは枳穀(キコク)と言います。

使用時には細かくして使います。

ちなみに、七味唐辛子には「陳皮」というものが含まれていますが、これは成熟したウンシュウミカンやマンダリンオレンジの皮を乾燥させたものです。

枳実は健胃、鎮咳作用があるほか、胸や腹の痛みに効きます。

芍薬

芍薬はシャクヤク(Paeonia lactiflora)の根を乾燥させたものです。

シャクヤクは、ボタン科ボタン属の多年草で、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という慣用句で有名です。

これは、ふつう、美しい女性の姿をいろいろな花に例えたものだと受け取られていますが、実は、漢方の薬効をたとえたものとも言われています。

つまり、「立てば芍薬」は気が立ったり筋肉などがこわばっている女性には漢方の芍薬がよく、「座れば牡丹」は座ってへたり込みがちな女性には牡丹皮が、「歩く姿は百合の花」は歩く時ふらふら百合のように揺れている女性には百合の球根がよいという意味でもあるのです。

芍薬は「立てば芍薬」ですから、上記のように、筋肉などのこわばりを緩める効果があるとされています。

甘草

甘草はカンゾウという植物(何種類かあります)の根を乾燥させたものです。

カンゾウはマメ科カンゾウ属の多年草で、甘い味がします。

欧米ではリコリス(スペインカンゾウ)と呼ばれます。

同じくリコリスという名前のお菓子がありますが、これはリコリスの甘味を使ったお菓子です。

甘草も漢方では非常によく使われる生薬で、日本で販売されている漢方薬の7割近くに甘草が含まれていると言われています。

甘味料としての働きのほか、緊張を緩和するとされており、鎮痛、鎮痙(ちんけい)、解毒などの作用があります。

割合としては柴胡が5割、枳実が2割、芍薬が2割、甘草が1.5割含まれています(重量比)。

四逆散の働き

四逆散の体への働きを見てみましょう。
k37

漢方の有効成分はどう働くのか

漢方では、身体を気・血・水という3つの要素で捉えます。

ただ、それぞれの要素の過不足だけでなく、滞った状態を考えるのが特徴的です。

気が滞ると「気滞」、血が滞ると「於血」、水が滞ると「水滞」という状態になります。

気の巡りを整え、「気滞」を解消するのが理気薬(りきやく)です。

柴胡(サイコ)と枳実(キジツ)はこの理気薬に当たります。

気が滞ってしまうと手足にエネルギーが行かないので冷えが生じます。

これが、四逆散がもともと手足(四肢)の冷え(逆冷)に効く散剤とされた理由です。

また、気が滞ってしまうと気がたまって膨満感やお腹や胸が張った状態(胸脇苦満)になります。

また、「気が張る」状態になるのでイライラや緊張感が出てきます。

西洋医学的に見ると

西洋医学的に言うならば、自律神経のうち交感神経優位の状態が続いている感じです。

つまり、ストレスが高いわけです。

ストレスが高いと末梢血管が収縮して手足の冷えが生じます。

これが「四逆散」の名前のいわれとなっている症状です。

また、ストレス性の胃炎や胃痛、過敏性腸症候群なども引き起こします。

ストレスは精神症状としては、抑うつ感、イライラ、神経質、ヒステリーなどです。

ここにヒステリーもあげましたが、神経症状には生理に伴うものもあります。

また、甲状腺機能障害などホルモンによる精神症状にも効果が期待できると考えられています。

西洋医学的観点を徹底すると、四逆散中の何らかの化合物が有効成分として働いていることも考えられます。

実際、柴胡に含まれるサイコサポニンにはステロイドのような作用があり、抗炎症作用を示すと考えられます。

漢方的には、理気薬である柴胡と枳実、それに緊張を緩和する芍薬と甘草が総合的に働いてこれらの症状を緩和しているということになるでしょう。

四逆散が処方される人

四逆散は「体力が中くらい以上」に処方されます。

漢方では、こういう区分がよく出てきます。これを「証」と呼んでいます。

「証」と言うと、西洋医学でよく言う「エビデンス」のように受け取られてしまうかもしれませんが、そういう意味ではなく人の状態です。

四逆散は「体力が中くらい以上」に処方されますが、同じく柴胡剤である小柴胡湯と大柴胡湯の中間くらいの「証」の人が対象です。

四逆散を使ってはいけない人

k36

四逆散は「体力が中くらい以上」を対象としますから体力の消耗が著しい人には適していません。

また、甘草を含む漢方に共通の問題として「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状があります。

これは甘草に含まれるグリチルリチンによるものです。

高血圧、浮腫(むくみ)や低カリウム血症が生じることがあります。

四逆散の甘草の量はそれほど多くはありませんが、様々な漢方薬に含まれているので漢方薬を併用する場合は、要注意です。

そのほか、妊婦の服用も医師に相談すべきです。

四逆散はどこで手に入るの?

四逆散は、一般用医薬品(第2類医薬品)としてドラッグストアやamazonなどでも購入可能です。

たくさんの医薬品メーカーから販売されていますが、例えば、求心製薬から販売されている四逆散は10包で価格は1980円です。

四逆散についてまとめ

四逆散は手軽に手に入りますし、イライラしがちだという人にはよいお薬です。

重篤な副作用もないので、試しに使ってみるとよいかもしれません。

但し、抗炎症作用以外は飲んですぐ効くというものではないのである程度時間を掛ける必要があります。